悪徳商法その他、危険な取引の被害に遭わないために
悪質な商品先物取引とは?
(1)先物取引とは
先物取引とは、将来のある一定の時期において、商品(金、銀、プラチナ、大豆、小豆、ゴム、砂糖などいろいろな商品)を売買する取引で、その一定時期までに反対売買をすることによって差金決済をすることができる取引をいいます。
仮に、本日、小豆を100万円で買ったとして3か月後にその相場が120万円になったとして、その時点で売ったとしますと、その時点で20万円の利益が出ます。これが逆に80万円になれば20万円の損失が出ます。また、これとは反対に、売っておいてその後に買い戻すということもできます。
先物取引業者とは、顧客と「商品先物取引委託契約」を締結し、顧客の注文を「商品取引所」という商品の売買を行うところに取り次ぎ、その取次ぎ手数料を顧客から受領することを業としている者をいいます。
(2)悪質業者の手口とは
悪質業者の手口は、契約した顧客から預かったお金はすべて業者のものにするというやり方で「客殺し」と呼ばれています。
そのやり方「手口」は次のとおりです。
- 第1に、「必ず儲かる」「いまがチャンスだ」などと顧客をあおり、先物取引の仕組みや危険性を十分に説明せず執拗に勧誘します。そして、しぶしぶにでも取引することになったら、なるだけ多量の取引を勧めます。(顧客にできるだけ多額の預託金を出させるためです)
- 第2に、取引を始めると、悪質な業者は顧客が相場について無知であることを良いことに、買ったり売ったり頻繁に取引することを勧めます。利益が出れば出たで「もっと儲けましょう」と、損失が出れば出たで「取り戻しましょう」と、何度でも取引をさせます。(取引を多くさせて手数料を多く稼ぐためです)
- 第3に、利益が出ても悪質業者は、それを顧客に還元せず、預かったままで、さらに取引を多くすることを勧めます。(顧客に利益を渡さず業者が吸い上げ、手数料も稼げるからです))
- 第4に、悪質業者は顧客と全く反対の取引を常時していることがあります。例えば、顧客が金を10枚買ったら、業者が10枚の金を売るなどの場合です。これを「向い玉」といいますが、こうすることによって顧客の損をそのまま業者の利益とすることができるからです。(顧客は何度も取引をさせられているうちに、いずれ損をします。その時は、その分だけ業者が利益を得ることができるのです)
- 第5に、悪質業者は、相場が下がって顧客が損をし、証拠金の追加を求められた場合、「両建て」といって、売り買いの枚数を同数にする取引を勧めます。この両建てというやり方は顧客の損を確定させるだけで、それ以上の意味はないといわれています。損が確定するということは「向い玉」をしている業者の利益が確定するということです。(業者はこの点でも手数料稼ぎができることになります)
- 第6に、悪質な業者は、顧客がすべての取引を決済してやめたい(これを「仕切り」といいます)といっても「今やめたらもったいない」などといってやめさせようとしません。 このほかにも悪質業者は様々な手口で、顧客の金を奪い取ろうとします。
(3)被害者救済の道はあるのか?
上記の手口のように顧客の金を奪い取ることを目的としてなされた行為は、違法であり、不法行為による損害賠償を請求することができます。 しかし、仕組まれたものであるため、裁判でこれを立証するのは大変難しいのが現状です。このため、取引をするに当たっては次のことに留意するようにしましょう。
- 余りにしつこい勧誘は要注意。
- 儲け話に乗せられないよう冷静に判断しましょう。
- 仕組みや内容が分からなければ断固として断るべきでしょう。
- もし、やられたと思ったら損をしてでも早めに取引をやめることが肝要です。
(4)消費者契約法との関係はどうなるか?
消費者契約法では、セールスマン(業者)による消費者への情報提供が不適切「不実告知」「断定的判断の提供」「不利益事実の不告知」があって、消費者に誤認を生じさせた場合であれば、追認できる(過去にさかのぼって事実を認めることができる)ときから6か月以内であれば契約を取り消すことができます。
また、セールスマン(業者)による不当な強い働きかけがあり消費者が困惑した場合、例えば「不退去」「監禁」などがあって契約させられた場合も同様です。
注・・「消費者契約法」とは、一般に消費者と事業者では、情報力・交渉力に格差があり、契約に当たって消費者に一方的に不利益なものとなる可能性がある。そこで、消費者契約に関する新しい民事ルールを作り、消費者の不利益を是正し、消費者の利益を守ることを目的に、平成13年に成立した法律。要点は次のとおりです。
- 消費者契約法の民事ルールは、労働契約を除くすべての消費者契約に適用があります。
- この民事ルールには、2つあり(同法第4条)、1つは「消費者に誤認があったときに、消費者は契約を取り消すことができます。(誤認とは、事業者が重要事実について不実なことを告げたり、将来の変動が不確実な事項につき断定的判断をしたり、消費者の利益になることだけを告げ不利益になることを故意に告げなかった場合」です。2つは「消費者にいわゆる事業者の困惑があった時は、消費者は契約を取り消すことができます。(困惑行為とは、事業者に対し住居などから退去を求めているのに退去しなかったり、消費者が退去したいといっているのに勧誘場所から退去させなかったりした場合」等です。
- 契約を取り消す権利は、追認ができるときから6か月間のうちに行使しなかったときは時効にかかって消滅し、また、契約を締結したときから5年を経過したときもやはり消滅します。(第7条)
- 事業者の契約責任を免除する条項とか、消費者の利益を一方的に害する条項などは契約の不当条項として無効とされ消費者はその条項には従う必要がありません。(第8条)。