■企業等のための暴力団対応・応対要領
平素からの基本的心構え
1.トップに必要な危機管理意識
トップ自らが、反社会的勢力からの「不当な要求に絶対に応じない」という毅然とした対応姿勢・方針を組織に示す。
現場担当者が事実を気軽に報告できる環境を整備する。
法律や一般社会の常識に則った解決を指示する。
2.危機に直面した際の体制づくり
平素から危機に直面した際の対応・応対責任者、同補助者等を指定して、公安委員会の責任者講習を受講させるほか、報告・通報手順等を定めておく。
対応責任者等は、組織を代表して対応・応対するとの自覚と、組織としての対策(回答)をするとの心構えで取り組む。
可能であれば、平素からできるだけ録音、撮影機器等の備えのある危機に直面した際の応接室を決めておく。
3.暴力追放運動推進センター、警察、弁護士との連携
可能な限り迅速かつ事前に暴力追放運動推進センター、警察、弁護士に相談できるよう平素から各機関の担当窓口・連絡方法を確認し連携を図っておく。
具体的な応対要領12則
1.相手の確認
- 受付係員又は窓口員は、応接室に案内あるいは具体的な面談に入る前に、まず、相手方の確認をする。
- <住所、氏名(フルネーム)、所属団体、役職、電話番号> <名刺の提供を求める、面会人名簿を備え記載させる>
- 氏名を名乗らなかった場合でも、相手の推定年齢、人相、身体特徴、乗車してきた車のナンバー、車種、塗色等をチェックしておく。
2.応対場所の選定
- 緊急な場合に素早く助けを求めることができ、精神的に余裕をもって応対できる場所(自社の応接室)などの管理権の及ぶ場所を選定する。
- 暴力団事務所や相手の指定する場所には絶対に出向かない。
- 相手が強引に外部の場所を言い張る場合は、衆人監視下の最寄りの喫茶店などを選定する。<なるべく警察に近い場所が適当>
3.応対の人数
- 常に相手より多い人数で応対し、それぞれの役割分担を決めておく。<責任者、記録係、録音係、連絡・確認係><相手が大勢の場合は代表1人~2人に制限する>
4.応対時間と要件・要求の確認
- 応対時間は、初期の段階で可能な限り短く指定する。 <○○時には○○があるので○○時まで> <30分位が適当>
- 初期の段階で、いかなる要件で、何の目的で来たのかを確認する。 <代理人の場合は委任状を確認し、委任者にも委任の事実を確認する>
- 相手が目的を言わないのに、勝手に「目的は金だ」と判断して金銭的な解決を前提に話を進めない。
- 相手が「誠意を示せ」等と言った場合も、その具体的な目的を相手から聞き出すように仕向ける。 <誠意を示せ~それはどういう意味ですか> <顔を立てろ~具体的にはどうすればいいのですか>
5.言動に注意する
- 不当な要求は、毅然として拒否する。当方の責任が明らかでない段階で「申し訳ありません」「ご迷惑をかけました」等、当方の非を認めるような言動は禁物。
- 事実が不明確な段階で「考えておきます」「検討させていただきます」等、相手に期待を持たせるような言動も禁物。
6.書類作成・署名・押印は絶対拒否
- 詫び状や念書などは、絶対に書かない。また、白紙等に署名、押印を求められても応じない。<後日、不当要求などに悪用される>
7.即答や約束はしない
- 応対は、組織的にすることが大切。相手は、当方が動揺している間に、組織的な方針が確立していないうちが勝負どころと考えて、その場での回答を執拗に求めてくる。事実関係が明確でない段階での即答や約束はしない。
- 解決を急がない。<事実確認、相談、組織的検討、回答>
- 特別の事情がない限り、当方から相手に電話しない。
8.トップは応対させない
- 暴力団等は、いきなり「責任者を出せ」「社長を出せ」等と言ってくるのが常。
- 当初からトップ等の決裁権のある者が応対すると即答を迫られる。最初にトップを出すと以後の交渉でもトップ応対を求められる。
- 「忙しい」とかの理由を言うと、居座られることがある。
- 「居留守」を使うと、相手に分かった場合にトップ攻撃に矛先を変えてくる。
9.湯茶等の接待はしない
- 湯茶等を出すと、相手は「居座り」を容認したものと勘違いする。
- 湯飲み茶わん等を投げつけたりして脅しの道具に使われる危険がある。
- 応接室には「暴排ポスター」「責任者講習受講修了証」等、当方の姿勢を示すものを掲示しておく。
10.対応内容の記録化
- 電話や面談等の内容を記録化しておくことは、相手を犯罪で検挙する場合や行政処分、民事訴訟の際に証拠として不可欠。
- 特に、録画や録音は、その正確さに加え、脅しのトーンも記録できる大切な証拠となる。<上司に正確に報告するため、間違いがあってはいけませんので>
11.初期の段階で暴力追放運動推進センターや警察等に相談・通報
- 何とか表ざたにならないように等の配慮から、軽率に相手に妥協して深みにはまってからでは遅すぎる。相談や通報が早ければ早いほど自信を持って間違いのない解決ができる。 <迷わず相談、これが解決の早道> <裏取引は、新たなスキャンダルを生む>
12.法的対抗手段の検討
- 行政命令・・・暴対法による中止命令等
- 民事事件・・・弁護士に依頼しての仮処分の申立て
- 刑事事件・・・警察に被害届を出しての検挙<暴力団を恐れない>